お客さまも大阪ガスも嬉しい
IoT化の取り組み

―ガス機器のIoT化に取り組むことになった
きっかけを教えてください。

戌角

戌角

当社がIoT技術を活用したガス機器として最初に発売した商品は、2016年に発売した家庭用燃料電池のエネファームtype S(以下エネファーム)です。エネファームは、都市ガスに含まれる水素を取り出し、空気中の酸素と反応させ、自宅で発電できるだけでなく、発電の際に発生した熱でお湯も作ることができます。
また、より省エネで生活を快適に過ごすために、多くのお客さまが温水式の床暖房や浴室暖房乾燥機をセットでご利用頂いています。

戌角

エネファームのIoT化は、スマートフォンアプリ(以下、アプリ)を使って、外出先から発電量の確認やお風呂の湯張りができるようになり、お客さまにとっての利便性が向上しただけでなく、大阪ガスにとっても、機器の運転データを取得できることで、商品の品質向上や、不調が疑われる場合の現場対応業務の効率化につながりました。
これまで不調が疑われる場合には、まず現場に出向いてから原因箇所の特定を行い、必要な修理部品を特定してから改めてご訪問する必要があり、お客さまにも事業者にも負担がかかっていました。
IoT化により遠隔でデータを取得し、機器の状態を解析できるようになったことで、現場で対応する回数や時間の大幅な削減が実現できただけでなく、もしもの発電停止時にお客さまにご連絡し、必要に応じて作業員の手配を行う、 お客さま向けの“運転状況の遠隔見守りサービス”にもこの仕組を活用しています。

―お客さまにとってはなぜ発電が止まったのか、そもそも故障が起きていることに気づいていない場合もありますよね。

戌角

戌角

発電については、給湯器のように止まっても実生活にご不便をおかけすることが少ないので、不調があっても気づかないことがあるため、その場合は大阪ガスからお客さまに連絡をとり、ご訪問するようにしています。
IoTを活用して「発電を見守る」ことはインフラ事業者としてお客さまに機器を安心して使って頂けるという価値につながると考えています。

牟田

牟田

「見守る」という取り組みは業務用の設備機器などではよく行われていましたが、家庭用の機器で実現することができたのは、技術の進歩やコストダウンによるものです。情報通信技術やサーバー、アプリは発展のスピードが速い分野です。
技術部門である我々も、お客さまにより良いプロダクトを提供していくために、従来の機器開発の知識やノウハウだけではなく、常に新しい知識を吸収しながらアップデートしていく必要があると考えています。

―お客さまの価値を高める点では、機器のアプリやユーザーインターフェース(以下、UI)にも注力されていますね。

戌角

戌角

エネファームのアプリでは発電量や電気使用量の見える化や、省エネにつながるアドバイスも行なっています。
これまでリモコンからしかできなかった表示や操作をアプリからも実現できるという点で、お客さまにとっては、場所や時間の制約が無くなり、より利便性があがったと考えています。

―IoT化にあたって、セキュリティ面はどのように考えていますか。

戌角

戌角

通信の暗号化やシステム構築、改修時の脆弱性検査は当然のこと、サーバーに蓄積されるデータは個人情報を一切含まないなどの工夫も行っています。
また、安全性の面ではサーバー経由で温度変更などの操作をできないようにするなどのリスクヘッジを行なっています。

お客さまの手元に届くアプリは
「先の先の先」を見据えて開発

―アプリのユーザビリティ向上に取り組まれる陽川さんは、まだ大阪ガスに入社されて間もないと伺いました。

陽川

陽川

東京や海外のWEBサービスを提供する会社で、WEBのプロダクト統括やプロデューサーなどの業務を経験してきました。元々大阪が地元でずっと戻りたい考えもあったところに、エネファームのアプリだけでなく、様々なWEBプロダクトを提供している大阪ガスで自身の経験を活かせるポジションの求人があり応募しました。
現在はプロダクト全体を横串で統括し、お客さまにより良いサービスを提供していくための改善を行っています。

陽川

―これまで経験されてきたWEBサービスの会社とのギャップはありますか。

陽川

陽川

狭く深くリアルなものを扱うという点でギャップはありますが、より高度なことを深く追求している実感があります。今まで扱ってきた商材と違い、大阪ガスでは生活に必要不可欠な商材を扱っているため、常にあらゆるシーンを想定し、より深く検討していかなければと考えています。
こういうことをすればこういう反応があるのではないか、我々は「先の先の先まで」見越して設計しなければならないことが、これまでの経験との違いを特に感じている部分です。

戌角

戌角

また、商材はWEBではなく、代理店などを経由してお客さまに販売していますので、その方々がお客さまにきちんと価値や使い方を説明ができるかも重要です。安全面だけでなく、影響範囲の大きさも含めてデジタル系のサービスを提供することを考える必要があると思っています。

―日本でIoT機器は増えているものの、使い方がわからない方、使いこなせていない方が多いですよね。

戌角

戌角

ガス機器は、生活に必要不可欠な製品のため、あらゆる世代の人が利用者となり得ます。新築購入に合わせてガス機器を使い始める方は、比較的若い世代が想定されますが、その後の買い替えや、さらに次の買い替え機会になるにつれて、ご購入頂く方の年齢もあがっていきます。
若い世代だけではなく、こういった世代の方にも便利だと感じて頂きたいと思って、プロダクトを作っています。

陽川

陽川

設計する側の思い込みだけでは誰でもわかるものにはなり得ないので、普段アプリを使い慣れていない方にもわかるシンプルな設計、理想は説明書を全く見なくてもすぐに使えるアプリを目指しています。現時点では難しい点もありますが、インストール後のチュートリアルや説明部分を充実させていきたいと考えています。
海外経験を通じて感じたのは、家電でもアプリでもWEBサービスでも英語圏で生み出されているものは直感的に使えるものが多い一方、日本では説明書・マニュアルありきのものが多い。それは当社に限らず、あらゆる業界において感じています。直感的な操作ができる海外のサービスはどこが良かったのかも参考にしながら、設計に生かしたいと考えています。

―顧客層が横にも縦にも広いので、UIを変更することでの問い合わせや反応は大きそうですね。

陽川

陽川

それも想定した上で考えなければならないことは、個人的にはやりがいであり、この仕事の面白みと思っています。お客さまの反応があることは、改善の機会であると前向きに捉えています。
実際に触ってみると、設計段階にはわからなかった課題が発見できます。アプリのアップデートにあたっては、プロトタイプを実際に操作した意見をメンバーで出しあい、テストと改善の作業を繰り返し行なっています。
また、10月以降、補助事業をきっかけに今まで利用されてこなかった層のお客さまにも使って頂けることを期待しています。そこで新たな声を聞き、次のアップデートに生かしていきたいと思っています。

戌角

戌角

今、販売しているIoT対応機器のうち8割程度の方がエネファームをインターネットに接続して頂いていますが、アプリ利用者はそれよりも少ないです。今後はもっと多くの方にアプリを使って、その価値を感じて頂きたいです。
そのためにも、お客さまの声を真摯に受け止め、日々の改善を行っていく必要があります。